地域密着型書店「北野書店」の挑戦

 街から書店が消えています。2017年の全国の書店数は12526 軒、1999年から 2017年までに 9770軒の書店が減少(日本著者販促センター調べ)。地元に根差した地域密着型書店とは……

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 川崎市生涯学習財団主催(かわさき市民アカデミー協働)による「地域社会に貢献している川崎の会社と人々」が、今年10月から来年1月にかけて開催されています。日本経済を牽引してきた川崎の先駆者から学び明るい未来を展望するこの企画、毎回好評を博しています。11月8日(木曜)には、北野書店の北野嘉信代表取締役を講師に迎えて生涯学習プラザで開かれました。演題は「一冊の本との出合いが人生を変える〜出版不況とネット書店台頭の中、地域密着型本屋の挑戦」。シニアを中心とする約70人の参加者は熱心に聴き入っていました。
 JR鹿島田駅直結のルリエ新川崎2階に約500uの売り場面積をもつ北野書店の創業は71年前の1947年。現社長の伯母(房子)が下平間で開業し、2年後には現在の鹿島田駅前に移り、高度経済成長期の60年代から市立図書館・学校への納入や教科書を扱い始め、書店として軌道に乗ります。父精三が二代目(現会長)を引き継ぎ、現社長の就任は08年、翌年には本店を現在のビルに移転して営業。
 こうした歴史を三代目の嘉信代表取締役は、当時の写真や地図を映し出して説明。
 「戦後の焼け野原の中で文化的なものを発信していこうという思いに突き動かされて書店を開業した時代は、菓子や食料なども求められていたため、販売していた。二代目時代に、書籍販売に加えレコード・楽器・文具など複合書店になりました。その後、鹿島田駅周辺には高層ビルが建ち街は様変わりし人通りも変わったため、社運を賭けて現在のビルに移転しました」
 そして嘉信代表取締役が積極的に取り組んでいるのが、イベント企画・地域コラボなどです。
 11月のイベントを見ると、幼児から小学生に大人気の「おしりたんていがやってくる」、「からすのパンやさん工作〜カラスとパンを作ってみよう!」、10年前から行っている「恒例!えほんの読み聞かせ」、13000人を有するポイントカード「KITANOカード」提示で得する地域コラボなど多彩です。
 読者サービスだけではありません、出版活動も行っています。絶版になっていた『かわさきのむかし話―ふるさとの心のごちそう―』の復刻(2015年)、『川と遊ぼう。土手の草花』(16年)など川崎ならではの出版物を刊行。
 地域密着型の書店の在り方を、嘉信取締役はこう語ります。
 「北野書店が各種イベントを率先して企画しているというよりは、地元の方々からのご縁の中から自然に生まれてきた企画なのです。イベントを通じて本に出合ってもらえるようなお店を目指しています」
 講演最後に同書店と所縁の深い、絵本作家のかこさとしさん(今年5月死去)との絆の深さを感じさせる話をしました。
 「かこ先生の原点は、古市場(幸区)在住時代のセツルメント活動で育まれたことを伝えたかったので、毎年6月に主催している市内の学校図書館向けの図書展示会で『かこさとし展』を同時開催しました」
 さらに「人は人と本と自然があってつくられていくと思っています。地域の皆さんの力をお借りしながら学び合い成長し、そして地域に貢献していきたいと思っています」と結んだ嘉信代表取締役。
 書店という空間に身を委ねまだ見ぬ一冊の本と出合う楽しみは、未来永劫続いてほしいものです。その姿が、地域密着型書店にあるようです。

北野書店(本店)
◇住所/川崎市幸区新塚越201ルリエ新川崎2F
◇URL(http://kitanobook.co.jp/